日本市場から見るAIアバター ── 企業と開発者との対話から見えた新しい視点

日本の企業パートナー、クライアント、開発者との対話がPerxonaの開発を改善していく

新しい市場に入るということは、学び直すということでもあります。外から見ているうちは単純に思えたことも、その市場で実際に動いている企業やパートナー、開発者、そして導入を検討されている企業と話しはじめると、まるで違って見えてくる。

私たちは日本市場で、まさにそれを経験しています。

これまで日本では、ホテル・観光、リテール、一般企業など、さまざまな分野の企業やパートナーとPerxonaについて話をしてきました。AIアバターのデモを行い、具体的な活用方法について議論し、質問やフィードバックをいただきながら、実際の接客の現場にAIアバターをどう組み込めるのかを考えてきました。

Perxona Avatar for Resol

一方で、私たちの学びは企業との対話だけではありません。

日本の開発者コミュニティ向けに、Perxona管理画面を使うワークショップやPerxonaコネクトキット(SDK)を活用するハッカソンも開催しました。

「AIアバターに何が必要だと思いますか?」と聞くだけではなく、実際に開発者が自由に作ることで、どのような使い方が生まれるのかを見ることができるからです。

こうした対話や実験は、私たちの製品に対する考え方にも影響を与えています。

そして、新しい市場に向き合うときに大切なのは、最初からすべての答えを持っていると考えるのではなく、まず相手の声を聞くことだと改めて感じています。私たちはまだ日本市場について学んでいる途中です。

ただ、これまでの経験を通じて、日本の企業や開発者がAIアバターに何を期待しているのかについて、いくつか興味深い傾向が見えてきました。そして、その学びはこれからのPerxonaの開発にも活かされています。

チャットボットから、より自然なコミュニケーションへ

AIアバターという考え方は、一見シンプルです。つまり、会話型AIに話したり動いたりするキャラクターを組み合わせるというものです。

しかし、企業との対話を重ねるほど、アバターそのものは全体の一部にすぎないことが分かってきます。

従来のチャットボットは、すでにデジタル接客における重要なツールになっています。よくある質問への回答、Webサイト上での案内、カスタマーサポート業務の効率化など、さまざまな用途で活用されています。

さらに、LLMやRAG(検索拡張生成)などの技術が進化したことで、企業が持つ文書や製品情報、社内ナレッジなどを活用しながら、より柔軟に回答できるAIシステムも実現できるようになりました。

Variety of Avatars from Perxona

一方で、すべての顧客接点において、テキストが最も自然なインターフェースとは限りません。

ホテルに到着した宿泊客であれば、Webサイトを検索するよりも、直接質問したいと思うかもしれません。展示会を訪れた人であれば、製品仕様の一覧を読むより、担当者に製品について直接聞きたいのかもしれません。企業施設を訪れた人なら、単純に「どこへ行けばいいのか」「誰を訪ねればいいのか」を知りたいだけかもしれません。

そこでAIアバターが一つの選択肢になります。

会話型AIの知能と、目に見える親しみやすいインターフェースを組み合わせることで、従来のチャットボットとは異なる顧客体験を作る可能性があります。

ただ、日本での対話を通じて私たちが考えるようになったのは、AIアバターが「話せるかどうか」だけではありません。

より重要なのは、

「その会話によって、お客様にどのような体験を提供したいのか?」

ということです。

AIアバターの多様なアプローチが、市場を広げている

日本は、デジタル接客がこれから始まる市場ではありません。すでに複数の企業が、それぞれ異なる考え方でAI接客とアバター活用に取り組んでいます。

株式会社ティファナ・ドットコムの「AIさくらさん」は、駅や商業施設などに導入され、アバターとAI、作り込まれた接客シナリオを組み合わせています。AVITA株式会社の「AVACOM」は、アバターを遠隔接客のインターフェースとして位置づけ、必要な場面では人のオペレーターが対応に入れる設計です。SELF(セルフ)株式会社の「SELFBOT」は、写真からのアバター生成などで制作のハードルを下げながら、生成AIによるナレッジ活用やFAQ機能と組み合わせています。JetB株式会社の「うちのAI」はテキスト型AIから音声対話型アバターへ広がり、株式会社ニコンとの共同開発による「うちのAI×Nikon 3D」も展開しています。

アプローチはそれぞれ違いますが、各社が向き合っている問いは重なっています。

どこまで自動化すべきか。人が対応することの価値は、どこに残るのか。見た目のキャラクター性は、どれだけ効くのか。アバターの制作と運用は、どこまで簡単であるべきか。そして最も本質的な問いとして、どんな場面であれば、アバターは従来のチャットボットより良い体験になるのか。

Perxonaを作りながら、私たちも同じ問いの前に立っています。

商談で、必ず聞かれる二つの質問

日本での商談で最も参考になっているのは、業種を問わず繰り返し出てくる、具体的な質問です。

一つ目は、「自社の情報を、そのまま使えますか」。

ホテルであれば、館内施設、レストラン、交通、周辺の観光情報。メーカーであれば、製品仕様や技術資料。受付用途であれば、施設の構造、部署、来訪手順。それらを扱えないアバターは、置いても意味がありません。

ここから私たちが受け取ったのは、鍵を握るのはナレッジ管理の実用性だ、ということでした。

Perxonaは、会話を一つひとつシナリオとして書き起こすのではなく、すでに社内にあるコンテンツとナレッジをそのままAIの応答につなぐ設計になっています。AIコンシェルジュ、AI受付、接客、製品案内——聞かれ方が無数にある用途ほど、この違いは効いてきます。

二つ目は、「多言語で対応できますか」。

とりわけホテルや観光関連の企業では、海外からの訪問者にどう情報を届けるかが切実な課題になっています。複数の言語で応対できるアバターがあれば、言語ごとに担当者を置かなくても、開いている時間すべてで訪問者を支えられる可能性があります。

だからこそ多言語対応は、後から足す機能ではなく、体験の設計そのものに組み込むべきものだと考えています。

開発者コミュニティからの学び

企業との対話から得られるのが一つの視点だとすれば、開発者コミュニティと一緒に作ることから得られるのは、また別の視点です。

だからこそ私たちは、日本の開発者コミュニティに完成したデモを見てもらうだけでなく、実際にPerxonaを使って自由に実験してもらう機会を作ってきました。

東京で開催したAIアバターハッカソンでは、9チームがゼロからスタートし、わずか1日で実際に動くデモを完成させました。そこで生まれたアイデアは非常に多様でした。

あるチームは、Webカメラを通じて来店客を識別しながら、口頭での会話だけで予約を完了できるレストラン受付を作りました。従来の予約フォームと全く異なる体験でした。

別のチームは、旅行予定が変わったときに強みを発揮する旅行コンシェルジュを開発しました。予定が崩れてもAIアバターがその場で代替案を提示し、それが実際に成立するかどうかは別の決定論的なエンジンが判断する——という設計です。

また別のチームは、深夜2時のコンビニを想定し、ジェスチャーで切り替えられる3体のAI店員アバターによるAI接客を考えました。

さらに、ホテルの宿泊者のスマートフォンとフロントデスクのタブレットに、同じAIコンシェルジュを同時に表示するアイデアもありました。一方では英語、もう一方では敬語の日本語で対応するという設計です。

そのほかにも、資格試験の400問を学習できるAIメンターや、食材の写真を撮ると名前や声、消費期限の情報とともにインタラクティブなAIキャラクターになる体験、怒っている顧客への接客対応を練習するトレーニングシミュレーションなど、さまざまなアイデアが生まれました。

私たちが特に興味深いと感じたのは、アイデアの多様性だけではありません。

開発者が、AIの「知識」とアバターの「外観」を別々の要素として考え始めていたことです。

複数のチームが、会話の途中でジェスチャーを指定したり、利用可能なモーションIDを確認することで、AIが存在しない動きを勝手に生成しないようにしたりするなど、アバターの身体的な動きを独立したチャンネルとして扱っていました。

これは私たちにとって重要な発見です。

Perxonaを、AIアバターの使い方を一つに限定するプラットフォームにはしたくありません。

むしろ、私たち自身がまだ想像していないような用途を、開発者コミュニティが発見できるような「ビルディングブロック」を提供したいと考えています。

その考え方の一つが、Perxonaコネクトキットです。

Perxonaコネクトキットでは、開発者が自分たちのAIモデルやアプリケーションをPerxonaにつなげられるようにしています。Perxonaコネクトキットは、完成されたサービスを提供するものではありません。開発者が持つ「LLM+ナレッジ」を、人が話しかけられるインターフェースにつなぐ——そのためのレイヤーとして機能することを目指しています。

8月8日に東京で開催したハッカソンは、その考え方を実際に試す機会にもなりました。

開発者は、私たちがあらかじめ想定していた用途だけではなく、さまざまな新しい使い方を短時間で見つけてくれました。

私たちにとって、それこそが大切な学びです。

AI受付からAIコンシェルジュまで、幅広く

日本市場から学んだもう一つのことは、企業が抱えている課題と、テクノロジー企業が使う言葉が必ずしも同じではないということです。

例えば、ある企業が「AI受付を検討している」と言ったとしても、実際に必要なのは、来訪者を迎え、館内を案内し、簡単な質問に答え、受付時間外にも情報を提供できる仕組みかもしれません。

ホテルが「AIコンシェルジュ」に関心を持っていたとしても、本当に必要なのは、レストランを探したり、交通手段を調べたり、周辺の観光スポットを紹介したり、ホテルの施設について説明したりすることかもしれません。

また、「無人受付システム」を検討している企業が、必ずしも自動化そのものを目的としているとは限りません。受付スタッフが一日中対応しなくても、来訪者により良い体験を提供することが目的なのかもしれません。この違いは、私たちにとって非常に参考になっています。

Perxonaを単純に「AIアバター」のプロダクトだと考えるのではなく、どのような顧客体験をサポートできるのかという視点で考えることが重要だと感じています。

AIアバターはインターフェースです。その先でどのような体験が生まれるのかが、より重要なのです。

なぜリアルタイムの3Dアバターなのか

AIキャラクターを作る方法は一つではありません。写真を動かす方法もあります。2Dキャラクターに話をさせることもできます。生成AIによって動画を作ることもできます。また、遠隔の人間オペレーターがアバターを操作する方法もあります。それぞれに適した用途があります。

私たちは実現したい体験の柔軟性を考え、リアルタイムの3Dアバターに取り組んでいます。3Dアバターは、単純に再生される動画とは異なります。会話に合わせて動き、ジェスチャーをし、反応し、表情を変えることができます。

その考え方の一つとして、PerxonaではBehavior AI™にも取り組んでいます。

アバターの動きや表情を、あらかじめ決められたアニメーションだけに依存するのではなく、会話やインタラクションと連動させることを目指しています。

もちろん、アバターが動けば良いということではありません。私たちが知りたいのは、その動きが本当に会話を自然にし、より良い顧客体験につながるのかということです。

8月8日開催の東京ハッカソンで開発者コミュニティが行った実験は、この考え方をさらに深めるきっかけになりました。

アバターの動きを、話す内容とは切り離して設計する。会話の流れに合わせて身振りを組み立てるという発想から、単に「話す顔」を作るだけでは届かない領域が見えてきました。これは現在も開発を続けている領域であり、日本の企業や開発者との対話は、どの場面でこうした表現力が最も価値を持つのかを考える上でも参考になっています。

実際の活用場面からの学び

日本で活動していて何より有益なのは、話をデモの段階から現場での活用へと進められることです。

宿泊・観光分野では、PerxonaのAIアバターが宿泊客にゴルフ、レストラン、交通、観光といった情報を案内する例があります。ただ、私たちが注目しているのは、AIアバターが質問に答えられるという事実そのものではありません。それが顧客体験の中に置かれたとき、何が起きるのかという点です。

宿泊客は、自分が何を知りたいのかを最初から正確に把握しているとは限りません。一つ質問して、その答えから次の疑問が生まれる。途中で話題が変わり、別の言語で聞き直され、事実ではなく「おすすめ」を求められることもあります。静的なFAQを検索する体験とは、まるで別物です。

こうした現場からの学びが、AIアバターが本当に役立つのはどこか、会話型のインターフェースはどこで価値を生むのか——その判断の解像度を上げてくれています。

東京のハッカソンにも、同じことが言えます。最も面白かったのは、最も高度な技術を使ったものではありませんでした。AIアバターがそこにいることで、ユーザーにできることが変わったものです。この違いは、私たちにとって決定的です。

私たちがまだ学んでいること

日本企業や開発者との活動を通じて感じているのは、「日本のAIアバター市場」を一つの市場として捉えることは難しいということです。

業界によって必要なものは大きく異なります。ホテルとメーカーでは目的が違います。自治体とECサイトでも課題は違います。展示会ブースと企業の受付にも、それぞれ異なる要件があります。

さらに、自動化の範囲、ブランドイメージ、セキュリティ、コンテンツ管理、多言語対応、顧客体験などに対する考え方も企業ごとに異なります。だからこそ、私たちはPerxonaをそのまま日本に持ち込めば良いとは考えていません。

聞くこと。

試すこと。

学ぶこと。

そして、必要に応じて変えていくこと。それが重要だと考えています。ワークショップやハッカソンは、そのプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

Perxonaを実際に使ってもらうことで、想定していなかった用途を試してもらい、そこから新しい発見を得ます。そのフィードバックが価値を持つのは、それが必ずしも私たちの予想通りではないからです。

これからのPerxona

日本でこれまでいただいた意見や質問、そしてPerxonaを使って開発者の皆さまが作ったものは、現在の製品開発にも影響しています。

企業が自社の知識やコンテンツをAIアバターにつなげやすくすること。さまざまなキャラクターやパーソナリティを作れるようにすること。多言語でのコミュニケーションをサポートすること。さまざまな環境でアバターを活用できるようにすること。そして、より自然な動きや表情を実現しながら、専門的な知識がなくてもAIアバターを構築・運用できるようにすること。

同時に、開発者が自由に実験できるだけの柔軟性も維持したいと考えています。

私たちは、日本市場が5年後にどのようになっているのかを正確に予測できるとは考えていません。誰にも、それを完全に予測することはできないでしょう。

私たちにできるのは、日本で一緒に新しい技術を試してくださる企業、パートナー、開発者の声を聞き、そこから学び、Perxonaをより使いやすく、より役立つものにしていくことです。

次世代の顧客接点を、一緒に作り上げていく

日本でこれまで学んできたことの中で、最も大きなものの一つは、「AIアバターが欲しいですか?」から会話を始める必要はない、ということです。

むしろ、最初に考えるべきなのは、「お客様との、どのような接点をより良くできるだろうか?」という問いなのかもしれません。

あるホテルにとっては、それがAIコンシェルジュかもしれません。ある企業にとっては、AI受付かもしれません。別の施設では、来訪者のためのバーチャル受付かもしれません。ECサイトでは、製品について説明するインタラクティブなAIスタッフかもしれません。そして、私たちがまだ考えていない使い方もきっとあるはずです。

東京のハッカソンは、そのことを改めて教えてくれました。わずか1日で、50名を超える開発者がPerxonaをレストランの受付、旅行コンシェルジュ、コンビニのAIスタッフ、トレーニングコーチ、ホテルコンシェルジュなど、さまざまな用途へと展開させました。どれも、私たちがテンプレートとして用意したものではありません。プラットフォームを触るなかで、開発者自身が見つけた可能性です。

だからこそ、私たちは日本のパートナー、企業、そして開発者の皆さまとの対話を大切にしています。私たちは、すでにすべての答えを持って日本市場に来ているわけではありません。

日本の皆さまと一緒に、聞き、学び、つくりながら、AIアバターがこれからどのような存在になっていくのかを考えていきたい。

そして、そうした対話と、Perxonaを使って生まれる新しいアイデアが、これから私たちが作るものを形づくっていきます。


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© 2025-2026 XRSPACE CO., LTD. All rights reserved.

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